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●3さいと4さいのデカルコマニー

まずは1色、これも嬉しいですね

色を並べるように試しながら

なにかに見えてくる時も

2月下旬に3さいと4さいでデカルコマニーという活動をしました。
デカルコマニーとは、紙を半分に折り、その片方に絵の具をつけて閉じ、開くと絵の具が
写って不思議な模様になる、というのを楽しむ絵の具遊びの一種です。フランス語です。
3さいの子たちは、初めのうちとても慎重で、1色付けては写った様子を見て嬉しそうに
先生に見せてくれます。色を混ぜたりせず、1色ずつ増やしていく感じでした。
やがて偶然に画面の中で色が混ざり合うと今度はその事を確かめるように色を重ねたり
混ぜたりを楽しむようになってきました。
初めは片方のページに付けていた子も段々大胆になって来て、両方にまたいで絵の具を
塗り付けています。
それでも閉じて開く事は忘れず、濃い絵の具のニチャニチャ感を楽しんだり、複雑に
混ざった色をじっと見つめたりします。
3さいの子たちにとってデカルコマニーは、絵を写す遊びとは違って、絵の具の面白さ自体を
味わう、絵の具遊びの延長の物だと思います。だから両ページに塗ったっていいのです。
ちなみに、先生やお友達に「わっ」と開いて見せること自体も遊びとして楽しんでいたようです。

混ざった色が綺麗ですね

初めから「絵」です

絵としての面白さもあるみたいです

直描きで修正

4さいは導入の時から「しってる〜」「うつるんでしょ」と言っていました。
さすがに少し先を読めるようになってきた4さいさん達は、初めから片方にある程度
絵を描いてから閉じて写そうとする子が多かったように思います。
絵を描きながら閉じたらどうなるのか予測をたてて、女の子なんかは、こんな絵にしたい
という計画のもとに絵の具を付けている感じでした。
しかし面白いのは、頭で知ってるのとやってみるのでは大違いで、絵の具は乾くという
現象が起きますし、垂れたり広がったりもします。
それで、メチャクチャ遊びというよりも、自分のしたい事をやりたい気持ちや、結構
ちゃんとしたいという気持ちが強い子達は、自分の思った通りに行かないと、開い
て擦れてしまった所を直塗りで修正したり、上手にしたい所は直描きして折らなかっ
たりしていました。
4さいの子たちにとってデカルコマニーは、もう感触や混色の遊びではなく、作品と
して画面を意識しながら自分のしたい事を積み重ね完成させていく事を喜びにしている
ようです。
もちろん初めから計画があるわけではなくて、遊んでいるうちに「あ!」と思いついたり
もします。
その偶然と意志との行ったり来たりが面白いのが、このくらいの年齢の子の遊びなのです。

綺麗な画面ですね

細かい絵が並んでいます

もう直描きで、折りません(笑)

アイスが2つになったよ!

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●地図の絵

マンションがその場で展開してます!

木が展開図で表されています、車も横向きです

家は道なりに横向きに描かれます、車線も詳しく知っていますね

保育園の5さいクラスで、地域の地図をみんなで造ってみよう!ということになりました。
しかし、担任の先生の考える「こんな地図」感と子どもの認識は違うかもしれません。
子どもの絵は一般に「視覚のリアル」ではなく「感覚のリアル」であると言われます。
では、実際に子ども達は地図という「記号」と自分たちのできる「お絵描き」とを
どのように認識し表現するのでしょう、それが分かっていなければ担任の大人の地図
造りになってしまいます。子どもが気持ちを込めて夢中になってできる地図造りの為にも
実際に子どものする事をまずは見てみよう、と言う事になりました。
今回は、自分の家から保育園までの道のりをみんなで話し合った後にお絵描きしてもらいました。
まず特徴的なのが「展開図」の様に建物を描く事です。
子どもは、だいたい4さい半くらいから、紙の上側を空にし、下側を地面にして、そこに
人や物を立てて、絵を「場面」のように表すようになってきます。
この手法を自分なりの「絵の描き方の法則」にして、また表現がどんどん広がってゆきます。
子どもは「地図とは、この世界を上から見たように表されている」ということを知っています。
だから遊びで描く迷路のように道路を描いたり自分の家の場所を決めたりできます。
しかし、子どもにとって地図を描く事も「お絵描き」の一種なので、先ほどの「絵とはこう描く物だ」
という子どもなりの法則もここに入ってくることになります。
子どもにとって建物は地面にくっついていなくてはならないし、その建物は横からの絵しか描けません。
しかし地図にすると地面であるはずの道路が紙の底辺から離れてしまいます。
そんな矛盾を子どもなりに解決したのが展開図画法です。
「建物や人は地面である線を下にして上へ向けて描く」ので道路の線をはさんで展開図のようになります。
ちなみに左の絵は、自分を囲むようにマンション群が建っているのを表そうとして、地面の線が円になり
マンションが開くように展開しています。

位置関係は正しいとの事、でも太陽が出てますね

道が空に延びちゃった。不思議な表現

紙をつなげて広い範囲の位置関係を描いてます。でもお空も

そして面白かったのが、この上から見た地図表現と横から見た絵画表現の混同です。
ここにも、なんとか知ってる事でこの世界を表そうとしている感じが見えて興味が
惹かれます。
大人が見ると遠近感を表しているように見えたり、道が空に延びているように
見えたりしますが、子どもにとっては感覚的なリアル空間なのでしょうか。

街は上から見てるのにお空が描かれています

公園の遊具の位置も細かく思い出して描きました

マンションは横から、道は地図的。虹も描かれています

歩行者用信号機が詳しく表されています。いつも意識して渡っているのでしょうか

自分の家が遠くにあるように見えます、たぶん偶然です

行動順に表しました、言葉で説明しているようですね

もう3つ
左の子は道路の信号や横断歩道に興味があるようです。細かく描かれてます。
真ん中の子もやはり建物は横から見た絵で表しています、絵の中では、遠くの物を
上に小さく描くと距離を表すことができるので、まるで遠近法で描かれているような印象を受けます。
右の子は地図を道ではなく自分の行動の順番で表しています。面白いですね。
子どもの絵の見方、解読の仕方はいろいろあると思いますが、この地図の絵が解ると
かなり色々な表現が理解できるのではないかと思います。
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●絵画作品の背景(バック)について

キラキラ、まわりの縁どりも子どもの絵にはよく見られます

下の部分はどんどん絵の具を混ぜて造った色、紙が破けんばかり

葉っぱを避けながら丁寧に塗りました

 子どもが主題を描き終わった時に、そのまわりの画面の空間をどうするか
というのは、指導者によって様々な考え方があると思います。
 
 私の場合は主題が描き終わったら、まわりを考える事を子どもに勧めます。
クレパスで主題を描いたら絵の具を用意して「絵の具でまわりを飾ってごらん」
と言ったり、「描いた物がもっと素敵に見えるようにまわりを考えてごらん」
と言ったりします。これがもっとも上手い言い方とは思いませんし、賛否あると
思いますが(まわりを描く事で絵を壊してしまう場合もありますし)、これには私
なりの理由があります。
 
 まわりを描く事をお勧めするのは、けっして大人の事情で絵の見栄えを華やかに
する為ではありませんし、時間の埋め合わせでもありません。
 その理由は2つ。一枚の絵になるべく長く関わってみて欲しいのと、子どもに
もうひと考え自分を掘り起こす経験をしてもらいたいからです。
 一枚の絵に長く関わっていると、新しい発見や、遊びや、ハプニングが起こる
可能性が高まります。そうした経験の積み重ねの中で、自分なりに表現することの
楽しみを広げて欲しいのです。
 もうひと考えというのは、人は制約がある事で自分が気がつかなかった力を発揮
したり、アイディアが浮かんだりします。小学生くらいになると自分の力の限界を
自分で決めてしまったり、少し余力を残した状態で完成にしてしまったりします。
そこで「主題に対してまわりを考える」という制約で、もうひと考え自分を掘り起こ
すような経験をしてもらい、やりきった!と満足して活動を終えて欲しいのです。
 もちろん活動内容や子どもの体調や様子を配慮してのことです。
 
 あと付け加えるなら、見栄えは関係ないと書きましたが、良い絵ができる事で
その子がたくさん褒めてもらえる事は重要だと思っています。褒めてもらえる事
や共感してもらえる事は、人としての自信に繋がりますし、自分らしさを気持ちよく
出せる人になって欲しい!というのが造形活動の目的の一つだからです。
 下の活動は、教室造形です。ゲスマニアという観葉植物を赤、青、黄、白の4色の
絵の具だけでパレットで色を混ぜながら描いたものです。

さわやかな雰囲気の絵ですね

風車?イメージが繋がったのでしょうか

無意識か画面のかたよりを木でカバーしています

水色と黄色の組み合わせが素敵です

1本の線でお空を表しました、鉢も工夫してますね

清潔感のある絵です、きちんとしてます

虹が流行りました、鉢の向こうを通るのが凄い!

葉っぱと虹のバランスが楽しいです

風も表現しました、とても丁寧に描いています

ピンクの色合いが真ん中の赤を引き立てます

渋い色の水玉模様が観葉植物に合っています

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●心と体

そんなこんなで出来たクワガタの絵

Kちゃん(4さい)は絵を描くのが苦手です。というよりも絵の具をしてもクレパスを使っても、そこに楽しみを見いだせないでいました。
楽しく感じられないから気持ちも後ろ向きになるし、それゆえお絵描きも適当にやってしまい、適当にやるからいっこうに上手くもならないし達成感もありません。そんな自分の絵を見るから、さらに自分は下手だと思い込み、やっぱり楽しくない。というような、悪循環にはまり込んでしまっている感じでした。
造形は基本的に上手下手という物差しではなく、その事を通して、子どもが自分でする達成感だったり、満足感だったりを味わい、1人の人として自信を持って生きて行くための手助けをするものだと思います。
私は、なんとかこの子にも卒園するまでの間に数回でもそんな達成感や満足感を味わってもらいたいと思います。
今回はそんな意味も込めて、最初から最後までKちゃんに付きっきりで一緒にお絵描きをしてみました。
一緒に描いてみて分かったのですが、Kちゃんは苦手意識の為に、体が外を向いてしまって画用紙に向かっていないし筆も上の方を2本の指でだらしなく持っている状態でした。だらしなく持つから筆が自分の思うどうりに動かないし、思いどうりに動かないからやっぱり上手くいかなくてつまらない。まさに負のスパイラルです。
 
 人は「楽しいから笑う」のとは逆に「意識的に笑顔を作ると楽しい気分になる」ということがある。と以前心理学の本で読んだ事があります。
 私は、よし、今回は何より体の動きから指導して、とにかく描きらせて、自分にもできるんだ!という事を味わってもらい、少しでも心が動く様な経験をしてもらおうと思いました。
(前振りが長くなりましたが)「体をシャンとすると心もシャンとするんじゃないか作戦」です。
 
 まずKちゃんの体をまっすぐに向かせ、筆も真ん中よりもちょっと下辺りをしっかりと持たせ、「よし、Kちゃんの好きな虫を描こう!」と半ば強引に話を進め、一緒に筆を持って胴体の楕円をしっかりと描かせてみました。その後は「中を何色にする?」「角は何色がいい?」「どこに描く?」「足は何本描く」とそのつど本人の意思を確かめながら、進めて行きました。
 できあがって「すごいね、よくがんばったね」と声をかけると「ん〜」と少し複雑そうながらも自分の絵を眺めていました。
 
 もちろんその一回でKちゃんの何かが劇的に変わるわけではないのですが、卒園までになんとか造り描く事の楽しみを、満足感を味わう事ができるようになればいいなと思っています。
ちなみに私から解放された?Kちゃんは、自分からオレンジ色を少し付けたり、手形で周りを飾ったりしていました。少しくらいは伝わったかな?と感じさせてくれたのはうれしかったです。
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●どう伝えるか2011.9.5

どんな気持ちで描いているんだろう

5さいの作品 パレットで色をつくりながら自分の心の中の花を描いてみよう。
パレットも3回目で色をつくることや、水をうまく使うことも出来る様になってきました
種から描き始めて自分なりに育ててお花を咲かせました。
さまざまな葉っぱやお花が描かれて、実にその子らしさのでる活動です。
その中で2人の女の子がこれを描きました。
正直びっくりです。震災以来テレビなどでよく流れているフレーズですが、子どもの
絵の中に出てくるなんて予想していませんでした。
私は、その場では呆気にとられて「すごいねー」などと言ってしまいましたが、後で
よく考えると、「ん〜」。どう考えればいいんだろう。
たぶん私が引っ掛かったのは、単に言葉自体に子どもが興味を持ってしまっている
感じがして、そうなったのは大人がどんな環境をつくったからなんだろう、という
ことを考えなければいけないのでは、という、いまだに考え中な感じです。
大人は良かれ悪かれ子どもに何かを伝えてしまう立場なんだから、どうせなら
心のあることを伝えて行きたいです。ね。